幹細胞治療の規制のために毎年数千億ウォン（＝数百億円）を日本に与えていいのか

京畿道龍仁市に住む腎臓ガン患者のキム氏（79）は最近、東京を訪れた。免疫細胞治療を受けるためだ。

韓国の病院で細胞を採取して日本に送り、約2週間後に培養された免疫細胞を日本で注射する治療を受けるためだ。今回で6回目になる。キム氏は「注射を打つのは1～2時間で済むので余分にスケジュールを空けておいて日本で観光やショッピングをしてくる」とし、「いつガンが再発するか分からないので常に不安だが免疫力は維持できているので来年1月に再び日本に行く予定」と述べた。

韓国で禁止されている免疫細胞治療を受けるために日本に遠征する人が急増している。最低でも数百万ウォン（＝数十万円）が掛かるが韓国で治療を受ける方法がないために日本に行くしかないのだ。日本、アメリカ、ヨーロッパなど世界中が幹細胞を活用した再生医療産業を育てているが、韓国だけが規制に縛られているという指摘が出ている。

24日の医療界によると幹細胞遠征治療で日本に行く韓国人は年間約3万人と推算される。1回の費用は600万～800万ウォン（＝60～80万円）台で、単純計算でも年間2,000億ウォン（＝約220億円）近いお金が日本に流出しているわけだ。世界中の患者が韓国の医療を求めてやってくる時代に、いざ韓国国民は遠征治療に追い込まれているのだ。学界では2005年のいわゆる「ファン・ウソク事態」（＝2004年2月に獣医師のファン・ウソク氏が体細胞由来のヒトクローン胚からES細胞を作製することに世界で初めて成功したと発表したが後にねつ造であることが分かった事件。引用：Wikipedia）によって幹細胞治療と研究が厳格に制限された影響だと指摘する。

政府も手をこまねいていたわけではない。2020年から先端再生バイオ法で規制緩和の道を開き、2月に関連の改正案が国会を通過した。保健福祉部は12月9日までに詳細な施行令を立法予告した状態であり、来年2月に施行予定だ。臨床研究対象をすべての疾患に拡大し、検証された再生医療技術に限り審議を経て治療を受けられるようにすることが骨子だ。

しかし、患者の需要を満たすには力不足だ。チャバイオグループのヤン・ウンヨン事業総括副社長は「政府が法律を改正したためだいぶ良くなったものの、日本のレベルまで解決するにはまだまだ遠い」とし、「何より治療対象が重大・希少・難治疾患の患者に限定されており、現在日本で治療を受ける患者が国内で治療を受けられる道は依然として閉ざされている状況」と述べた。

実際にチャバイオグループが運営するトータルセルクリニック東京によると、直近10年間でこの病院を訪れた韓国人患者の約30～40%がガンの経験者だ。常態化した痛みに苦しむ骨関節炎患者が約30%、美容や抗老化などを目的にした健康な患者も30%いる。これらはすべて現行法上では重症や難病患者に該当しないため、法が改正されても韓国で治療を受けることはできない。

日本では幹細胞治療は規制がほとんどない一般的な手術レベルの医療行為に過ぎない。日本は2015年から医療機関で制限なく細胞治療ができるように法律で認めている。2012年に京都大学の山中伸弥教授が誘導万能幹細胞（iPSC）の研究でノーベル生理学・医学賞を受賞すると、幹細胞を未来の医学の中心軸として規制を緩和したからだ。

患者当たりの治療費用は数百万ウォン（＝数十万円）から1億ウォン（＝1千万円）台まで多様だ。世界中で毎年10万人以上が幹細胞治療を受けるために日本を訪れる。関連産業まで合わせると、内外国人を合わせた市場規模は数兆ウォン（＝数千億円）台と推定される。韓国でも3～4社が東京でクリニックを運営している。日本の病院と提携した斡旋会社も盛業中だ。

（後略）